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「喜」喜び
五味を引き立てるごま豆腐 
 禅寺で生まれ育ったとはいえ、末っ子の自分はあまり寺のことに詳しくない。そんな自分が唯一親から教わった寺っぽいものが「ごま豆腐」の作り方だ。親元を離れ、一人暮らしも7年目になるが、ワンルームの小さなキッチンで細々と作り続けている。
 ごま豆腐の作り方はいたってシンプル。すり鉢でごまをすり、葛で固めれば出来上がりなのだが、このごますりが意外に大変だ。ペースト状になるまでひたすらすること1時間。本当にペースト状になるのかだんだん不安になってくる。腕は棒になり自然と勢いが落ちてくる。気が散ればごまがすり鉢の外に弾けとび、なかなか手ごわい。ゴールを信じて無心ですり続けなければならない。なるほど、禅寺でごま豆腐づくりが修行のひとつになっている理由がよく分かる。
 こうして作り上げたごま豆腐は、とても素朴な味で、はっきりいってごまの味しかしない。幼いころに食べたときは、どこがおいしいのか分からないほどの物足りなさだった。精進料理には「六味」という表現があるのだが、この物足りなさはその中の「淡味」に当たるそうだ。淡味は、一口食べておいしいと分かるものではなく、なんとなくおいしいなと残る、返り味のことで、淡味があってはじめて他の五味(甘い、辛い、苦い、酸っぱい、塩辛い)が生きてくるらしい。そういえば、ごま豆腐につける甘味噌は、単品で食べるよりもごま豆腐と一緒に食べるほうが断然おいしく感じる。先日、友人宅でホームパーティがあったときも、お土産に持っていったごま豆腐が他の料理の味を引き立ててくれた。
 数少ないレパートリーのひとつのごま豆腐を、これからも大切にひっそりと作り続けていきたいと思う。         (2008.1 しのはら)
ごま豆腐

ごま豆腐のレシピ
材料(4人分)
いりごま 70g、葛 45g、水 2カップ
【甘味噌】 八丁味噌 小さじ2、みりん 大さじ1、昆布だし 大さじ1、砂糖 大さじ1

作り方
ごまをペースト状になるまでひたすらする。
水を少しずつ加えたあと、裏ごしして葛を入れる。
中火にかけ、固まってきたら弱火にして練り続ける。コシが出てきたら型に入れて5分ほど置く。
水に沈めて30分冷やす。
型から出して切り分ければ出来上がり。
【甘味噌】
甘味噌の材料を鍋に入れ、弱火で5分程度混ぜ合わせる。

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