群羊社事典 < 事典3
元祖3段式献立ブック「類似品」てんまつ記
 群羊社のオリジナル、3段式献立ブックは、上・中・下の3段にカットされたユニークな料理本です。このように3段にカットされた本は、外国では時々見られ、国内でも絵本形式のものがありました(発行後にわかったことですが)。デザート・飲み物などに分類されただけの外国の3段式本に比べ、元祖3段式献立ブックは、主食・主菜・副菜に分類された3段の料理群から好きな料理を選んで組み合わせるだけで、栄養バランスのとれた、昔ながらの一汁二菜、もしくは一汁三菜の献立が同一誌面上にできるのがユニークです。順列組み合わせで膨大な組み合わせ数になることも魅力です。
 このアイデアには伏線があり、別のダイエット本で実験ずみでした。ダイエット本は、エネルギーと栄養素バランスをキープする必要上、お仕着せの献立が多く、利用者にとってはつらいものでした。組み合わせ自由だと、ゆるやかですが、エネルギーや栄養素バランスを保ちながら、読者の実状に合わせて選べるのが大変好評でした。しかし、このときはまだ同じ誌面上で組み合わせができず、ちょっと不便でした。
 「同一誌面上で組み合わせができないか?」と、名料理編集者である今容子さんと居酒屋で酒を飲みながらあれこれ考えているうちに考えついたのが元祖本のシステム。この時点では、外国のものも国内の絵本も知りませんでした。

 1991年11月20日、ついに日本で最初の「組み合わせ自由・簡単おかずでおいしい献立」(料理:久松育子、撮影:佐伯義勝)が誕生。以下7巻を発行しました。
 このシリーズは大きな反響を呼び、弱小出版にもかかわらず書店料理棚での反応もすこぶる良く、料理編集者なら知らない人はいないほどの存在感となりました。
 発刊の前に実用新案を申請し、その後審査請求を行いましたが、予想に反して「先願」がありました。しかし、この先願者は審査請求も実用化も行っていなかったので、現実に「組み合わせ自由・3段式献立ブック」が世に出たのは元祖本がわが国最初だったと思います。
 しかも、この先願は主食・主菜・副菜の分類ではなく、栄養素別に4段に区切っていました。栄養素による分類方法と、主食・主菜・副菜の料理別による分類法が、似て非なることは今や常識で、足立己幸女子栄養大学教授らの研究や、国が定めた「食生活指針」でも明らかです。しかし、当時特許庁は「類似」と判断し、実用新案を認めようとはしませんでした。
 
 この本を出版したとき、おもしろい反応がありました。「同じ案を自分も考えていた」「同じ企画案を考えたがコストが高いのでボツになった」という業界仲間が多く、中には「10年前に、このアイデア話したでしょ」など、まるで企画案を盗んだようなリアクションも数件あり、びっくりしました。まあ、みんな考えることは似たようなものなのでしょう。コロンブスの卵ですね。

 このシリーズは売れ行きも良く、その後ゾクゾクと類似品が出版されました。把握しているものを取り上げると、

★NHK出版─カード式献立8000「長寿のための糖尿病の食事」1991年11月発行
★日本タッパウエア─「スタッフクッキングメニューブック」1992年
★集英社─「TANTO」1995年12月号綴じ込み
★集英社─スリーカード方式「魚料理献立ブック」1996年7月3日、ほか同シリーズ数冊
★主婦の友社─主婦の友1月号別冊付録「365日の夕食3品献立組み合わせ自由自在」1997年1月
★主婦の友社─カード式「一生使える毎日の糖尿病献立」1997年4月20日、ほか同シリーズ数冊
★主婦の友社─3段カード式「365日の夕食献立自由自在ブック」1997年12月18日、ほか同シリーズ数冊
★医歯薬出版─3連式「糖尿病の献立」2000年11月15日 


 以上、「まね」かどうか、知的所有権等の侵害行為に当たるかかどうかは今後、司直の判断にゆだねるとして、確かなことは、これらの本は群羊社の元祖本の存在を知っていて作られたことです。このことは、様々な証言、証拠から明らかです。そして、仕様やビジュアル、データ表示などではいろいろ違いがありますが、本の価値のほとんどを占めるシステムはなんら変わりありません。
 「柳の下のドジョー」をねらうのも、まねるのも合法的なら結構でしょうが、その場合でも、なにか進化した付加価値をつけようではありませんか。それが編集者の仕事ではないでしょうか。
 物まね主義はやがて自分自身の首を絞めることになり、出版界を衰退させることになるでしょう。折しも再販問題での守勢を「文化事業」を錦の御旗でしのごうとしている出版業界にあってはなおさらのことです。出版界がにぎわうためには、オリジナリティーでの競争こそが大切であると、自らへの戒めをも含めて、感じています。
(藤原眞昭)