バックナンバー < バックナンバー8
←前ページ次ページ→
試食の真実
撮影中。カメラマン・松島均さん
撮影中。本日のカメラマンは松島均さん
盛りつけをチェックしています。
お皿をキレイに掃除したり、盛りつけをチェックしたり。
試食の準備中
試食の準備。今日はごはん物が多い……。
なごやかに試食。
なごやかに試食。左から2人目は管理栄養士でもある宗像伸子先生。
「撮影した料理って食べられるの?」
よく聞かれる質問です。答えは──
「もちろん食べるよ。食べられない料理を本に載せるわけないじゃない!」


撮影というと「特殊な材料や得体の知れない化学薬品を使ってキレイに見せているんじゃないか」
とか「特別な作り方をしているんじゃないか」と、あらぬ誤解を抱いている人もいるようですが、そんなことはありません! 普通に作って味つけもちゃんと作り方通りにして、おいしく食べられます!(たいていの場合は……)

 そもそも料理書は読者の皆さんにおいしい料理を作ってもらうためのもの。実際に作ってみてちゃんとおいしいことが、本で紹介するための必須条件です。

 撮影の現場は、おいしい料理が紹介できるか、最終チェックの場でもあります。料理を作ってくださる料理研究家の先生や料理人の方々は、この材料を使って時間はどれくらいかかるかを計ったり、味つけを確認したり、原稿ではどんな手順で書けばわかりやすいかを考えたりしつつ料理を作ってくださいます。
 そしてカメラマンさんやスタイリストさんの協力のもと、料理はさらにおいしそうに演出されて、写真におさまります。この“演出”も、もちろん怪しげなことをするということではありません。その料理にピッタリの雰囲気を、クロスや小物を添えて表現したり、ライティングを工夫したり…ということで、特殊加工をするわけではありません。


 そうこうして撮影し終わった料理は、スタッフのおなかへ。だってこれは大事な大事な仕事です! その料理が紹本のコンセプトに沿っているかどうか、味や特徴をどう表現するか、原稿を書くときのポイントはどこになるかなどなど、実際に味わってみなければわからないじゃありませんか。試食は編集者にとって義務なのです!
 と、ここまで書くと「おいしいものがたくさん食べられてうらやましい〜」と思われるでしょうが、これもまた……。

 想像してみてください「肉料理ばっかり30品」とか「めん料理ばっかり20品」「甘いお菓子15品」の世界を。雑誌にしても単行本しても、いろいろな料理がまんべんなく紹介されていることはほとんどなく、テーマが設定されています。たとえば“夏においしいトマト料理!”とか“おもてなしにも向くなべ料理!”とか。つまり撮影時の試食も“○○ばっかり”になるわけです。
 最初の4〜5品は調子よく食べられます。10品目ぐらいになるとおなかがそろそろ満たされてきます。15品目ともなるとギブアップ気味です。いくらおなかがじょうぶで食べることが大好きでも、同じ食材や調理が続くとやっぱり飽きるし、つらいものです。

 私の経験から判断すると、野菜料理やごはんものは品数がかさんでも結構食べられます。最悪なのは肉。品数が増えていくにしたがって、味や臭いが気になってどんどん食べにくくなります。同じたんぱく質源でもまだ魚は食べやすいようで、こんなとき「日本人なのね」と実感します。そして「おいしいものならいくらでも食べられる」というのは嘘だということも……。
 世の中には満足に食べられない人だってたくさんいるのに、とっても贅沢なことです。ですから、食べきれなかった料理はおみやげにしてお持ち帰りします。この“おみやげ”に関してもまたいろいろとエピソードがあるのですが、それはまた別の機会に。
 とにかく、料理編集者にとって撮影には試食がつきもの。どんなにおなかがいっぱいになっても、同じものばかりで飽きても、体調が悪くても食べねばならない、嬉しくもありつらくもある仕事の一面といえるのです。
▲ページトップへ