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食育に熱心だった三ツ星シェフの死

 フランスのグルメガイド「ミシュラン」で最高位の三ツ星シェフ、ベルナール・ロワゾーが、今年2月24日、猟銃自殺を遂げた(享年52歳)。「水の料理」とよばれる独自の料理法、すなわちバターやクリームで風味を出す従来の伝統的なフランス料理に対し、水を使って素材それぞれの味わいを引き出すという方法を確立し、星なしに格下げされていたブルゴーニュ地方ソーリューの老舗「ラ・コート・ドール」を三ツ星へと導き、かつての栄光を取り戻させた超実力派シェフだ。
 ロワゾーの素晴らしさはそれだけではない。子どもたちへの味覚教育にも熱心であるがゆえ、ロワゾーの経営する三ツ星レストランは「大人の社交場」にとどまらなかった。子どもの頃から本物の味に触れられる機会を提供したいという思いから、子どものための特別メニューを用意していた。庭園にはブランコやすべり台などの遊び場をつくった。ある時には、レストランを小学生の課外授業の場として開放し、味覚の授業を行っていた。
 「味覚の基礎が形成される子ども時代に何を食べるかが重要だ。子どもの頃にこそ本物の味に触れるチャンスが必要だ。その味は生涯忘れられない記憶として残り、食べる喜びを満喫できるだろう」「子どもたちのために、食材について学ぶ機会、味覚を磨く機会をもっと増やすことが大切だ。これは家庭でも同じこと。家庭料理こそ食の原点なのだから。家庭の味を失わずに、代々伝えていってほしい」
 「私にとって食べるという行為は、生きていることを実感する最も美しい瞬間」と語っていたロワゾー。その美しい瞬間を、数々の傑作料理をもって多くの人たちに提供し続けたロワゾーの死が惜しまれてならない。

(ひらやまひろみ)