何とも不甲斐ない話です。人けのない、線路沿いの一方通行の道で、後ろから来たフルフェイスのヘルメットをかぶったバイクの人に、あっさりと左手にぶら下げていたバッグを取られました。
中身は取材ノート、取材テープが入ったままのレコーダー、資料諸々、名刺入れ、そして! 前回と前々回に撮影したポジフィルム。つまり、私にとっては命の次に大事な仕事関係の品々です。キャッシュはさほど入っていなかったが、財布の中にはカードと未清算の領収書がぎっしり。免許証に携帯電話、家の鍵、あいにくと通帳までその日にかぎって入れていたではありませんか。
ホントにその日はついていなかった。仕事の帰りに京浜東北線が新橋の人身事故で停まり、延々と発車見合せ、少し動いては時間調整と、ほんの20分で帰れる神田から自宅駅まで1時間半もかかり、電車は無茶苦茶大混雑。隣の女性がワキガで臭くて気分は悪く、クタクタでした。 いつもならスタスタと歩く自宅までの一本道を、プーラリプーラリ歩いていたうえ、ふだんなら大事な仕事の品は別の手下げ袋に入れてバッグとは分けて持つのに、なぜかその日はそうしなかった。悪いことは重なるものです。いずれにしても油断したとしか言いようがありません。
しかし、見事にひったくられるものですね。後方からバイクの音が近づいてくるのは気づいていたのですが、それがなぜか普通と違って自分のほうに接近してくる。(あれっ、何で近づいてくるのぉ。イヤだ、轢かれちゃうじゃない!)と体を開いたとたん、スイッと「荷物を持ってあげるよ」みたいな感じで取られました。走り去るバイクに「やめてー」と怒鳴るのが精一杯。ナンバープレートなんて、見る余裕もなかった。
大きなお世話と言われそうですが、皆様も十分お気をつけ下さい。あとで警察からも言われましたが、車道側に大事なものを持って歩くのは無防備すぎるのだそうです。
それにしても、警察の事情聴取は不愉快きわまりなく。無くしたもの一品ずつ損失額を述べるのですが(たとえば、テレコは5000円とか、資料の本は定価2500円とか、バッグはブランドものだがだいぶ使い込んでいるのでせいぜい3000円とか)。
「ポジフィルムは10万以上、値がつけられない」と言ったところ、「あなたにとってはそうかもしれないが、他人にとっては1円の価値もない」と言われた。
そりゃそうかもしれないけれど…。
まぁ、文句は言えません。手際よく銀行やクレジット会社への手配を教えてくれて、その場で処理させてくれたし、「引ったくり犯は現金が目的だから、それ以外のものは大抵出てくるよ」となぐさめてもくれた。だけど、「このあたりは川が多いから川に投げられたらおしまいだね」とも。うー、です。ともかく、ひったくりに合った直後、110番するために駆け込んだ現場近くの知人宅まで送り届けてくれました。 |
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そうなんです。私はひったくられたあとバイクを追いかけ、見失ったところのすぐ近くの友人宅(理髪店)に駆け込み警察に電話したのです。その後パトカーがワサワサ来て、現場検証して警察で事情聴取となった。それが終わっても鍵がなくて家に入れず、息子が帰るまで、またその友人宅に戻って待機していました。
すると、来る来るご近所の人。「お宅にさっきパトカーが来てたけど、どうしたの?」
と興味津々。さすがに皆さん手ぶらでは来られないのか、とうもろこし2本とか漬物とか菓子とか、何か手土産持ってくる。「うちではないんです。知り合いがひったくりに合ってうちに駆け込んで」と彼らに解説しつつ、「こんなに物をもらっちゃった、あなたのこ
とでだから、少し持っていく?」と友人。
……悲劇の裏には苦笑しちゃう裏話がつきものなのですね。
以下、後日談
翌日の午後7時半過ぎ、自宅から車で20分ほどの交番から「バッグが見つかったので至急取りにきてください」との嬉しい電話が入りました。そのあたりのマンションの植え込みに捨てられていたそうです。警察の言ったとおり、現金以外はすべて無事とのこと。
私「わーっ、嬉しい、よかったぁ! 有り難うございます。フィルムは大丈夫ですか!」
警察「大丈夫みたいだよ。すぐ来てくれる?」
私「免許証がないから車が出せないんですけど、いいですか」(実はすでに晩酌してた)
警察「免許証ならここにあるよ」(それでいいのか?)
私「(シャワー浴びてアルコールを抜いていかなくてはならないしなぁ。やっぱまずい)
息子が帰ったら車出します」
というわけで行ってみると、警察の方の急いでいた理由がわかりました。前夜降った台風による大雨で荷物はぐちゃぐちゃ。交番の内部には新聞紙がしきつめられ、バッグの中の持ち物がすべて並べられて乾燥中。その量の多いこと。足の踏場もない。「よくこのバ
ッグにこれだけ入れてたねぇ」と厭味を言われたものの、フィルムの無事を確かめてどんなに嬉しかったことか。
雑談したがるおまわりさんに気分ウキウキ対応しようかなと思った矢先、新たな被害者の駆け込み。
「すぐそこのコンビニで買い物しようと思って、キーつけたまま車停めてたら、だれかが乗っていっちゃったみたいなんです!」と女性。まったく、不用心な世の中になったものです。 |