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料理書のエネルギー計算の舞台裏
 料理書のエネルギー表示や、エネルギー別料理書が人気を集めています。「1日1200kcalのバランス献立」という本がある大学出版部から出版されたのは1983年2月のこと。ちょっと風変わりな書名でしたがこれが大ヒット。各社から続々類書が出版されました。このころからエネルギー表示した外食や加工食品のガイドブックもよく売れるようになりました。当時は実際の外食メニューを撮影したあとピンセットで材料ごとに分解し、重量をはかり、塩分濃度計で塩分を測り、栄養士がエネルギー計算を行うなど、結構大変な作業でした。

 料理書のエネルギー計算の元になっているのは「五訂日本食品標準成分表」です。このデータを転載して独自の関連資料などを加えた、各社の「食品成分表」が多種類市販されています。
 食品成分表の成分値は、日本食品分析センターなどの専門機関で分析されます。ところが、マグロ一つとってみても、品種や産地、季節、成熟度、鮮度などが変わるので個体によって成分値もバラバラ。分析には膨大な時間と費用がかかり、検体には限りがあります。使用頻度の高い食品はできるだけ多くの検体を分析して平均値をとりますが、頻度の低い食品については二つや三つの検体数のこともあります。また、昔のデータをそのまま使い続けているものもあります。
 つまり、食品成分表に掲載されている数値は、実際に食べる食品とは似ているけれども決して同じではないのです。
 
 料理書のエネルギー表示は、この食品成分表を元に計算します。今は専門の計算ソフトが市販されていますが、これもデータを入力しなければ計算できません。個体によって成分は大きく違いますし、調理によっても変わってきます。加熱で目減りする成分や水や熱に弱い成分もあります。油脂を使った場合は、その油脂が100%吸収されるわけではなく、調理方法によって吸油率がバラバラです。調味料によっては、蒸発するものもあります。
 輸入品や加工品については成分や原料が不明のものもあります。原産国の食品成分表で調べたり、似た食品の成分で代用したりします。

栄養計算は主に計算ソフトを使うがその元は国が発行するオフィシャルデータ「5訂日本食品標準成分表」(右)、そのデータを使って編集した各社の成分表(左3冊)。
エネルギーガイドブックの草分け的な実用書。2冊ともミリオンセラーとなった。いずれも女子栄養大学出版部刊。 
このようにさまざまな条件を組み込みながらエネルギー計算を行うので、専門の知識が必要です。出版界では、エネルギー計算専門の人もいます。それでも料理本にあるエネルギー表示と実際に口にする食べ物とではかなりの違いが生じるのはやむを得ないことです。
 さらに、料理書のエネルギー表示は、食べられるものはすべて食べたものとして計算してありますが、実際には食べ残しもあり、蒸発量、器に残った煮汁・ドレッシング・ソースやタレなど口に入らない物もあります。

 このようなエネルギー計算の現実を考えると、10kcalや20kcalに一喜一憂するのは意味があるとは思えません。あくまで表示は目安と考えるべきです。それでも目安はないよりあったほうが断然トクです。大切なことは、食事全体のバランスや適量を考えることです。栄養素のこまかい数値にこだわるよりも主食・主菜・副菜がそろっているかどうか、食事全体をチェックすることがベターです。
 また、エネルギーを気にするあまり、ダイエット本などで、「天ぷらやカツは衣を残す」「ギョーザは皮を残す」「めん類はつゆを残す」といったアドバイスが時々見受けられますが、天ぷらから衣を残したら天ぷらではありません。めんとつゆは一心同体です。このような食文化を否定してまで無理に食べるより、ほかの料理を選ぶことが賢明と思います。(ふ)
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