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食の仕事人 100番勝負 vol.9

夫婦で活躍する「食研究家」石井裕加・達也夫妻
夫婦で活躍する料理研究家はめずらしい。
昨年秋、大阪産野菜をつかったメニューをプロデュースした大阪のホテル内レストランで。
 「食研究家」の肩書きをもつ石井達也さん、裕加さん。裕加さんは一昨年の「テレビチャンピオン3分間クッキング」で優勝した実力の持ち主。達也さんはアートも専門とし、絵画や書はレストランの雰囲気を盛り上げるほか、自著ではイラストやデザインなども担当。ともに「料理」の範囲にとらわれず、食に関わる空間や食のあり方、楽しみ方全般をフィールドに提案したいと考え、料理研究家でなく「食研究家」を名のる。
ふたりはすでに、関西では若い女性から中年の主婦まで、幅広く人気を集める。美味しさを増すちょっとした工夫や、主婦が家族にほめられるようなお洒落なアレンジの仕方が支持を得た。

 夫妻と出会ったきっかけは、大阪府の農協グループの紹介。夫妻は遠隔の大産地に押されて知名度の高くない、けれど味わいのある大阪府産「なにわの伝統野菜」を中心にPRし、その新鮮さや食味を引き出すレシピを開発する仕事をしていた。なにわの伝統野菜は、これまで20年近くにわたり官民挙げて復活を目指してきたもので、ナスやキュウリなど風味豊かな品目がそろう。昨年秋に、府と市が認証制度をつくり、近畿地域で消費を増やそうとPRを始めている。
 産地とレシピを紹介したパンフレットは昨年末に完成。ふだん新鮮な野菜を食べ慣れている農家も、そうでない消費者もうならせる、オリジナルレシピが並ぶ。
キリモミ式発火法で手作りの火を作る岩城さん 大阪の特産野菜「水ナス」をミニトマトとオリーブオイルで合えたサラダ。トマトの甘みと水ナスのさわやかな香りが広がる一品。 好評の著書「10分で夕ごはん」
 神戸・御影の住宅街では、ワインと料理の教室「おいしいワイン会」も開いている。昨年秋のワイン会でマンションのダイニングに集まったのは10人あまり。 
 裕加さんが料理2皿を作り、達也さんがワインをサーブして生徒のテーブルを周る。達也さんが選ぶワインにどんな料理をどう合わせ、どう楽しんでもらうか。裕加さんが考え抜いた何品もの料理を味わいながら、好きなように感想を言い、自分なりに味わえる雰囲気。裕加さんと達也さんのチームワークと、食への静かな情熱が伝わって実現した空間だ。
  
 ともにデザインの世界で仕事をした二人はお洒落でキッチンもセンスがいい。しかし同時に感じるのは、食への探究心の強さだ。調味のこつ、素材の選び方、食べ方、二人の研究の日々が推し量れる。おいしいものを普段の生活で楽しんでほしいという共通の思いが夫妻そろっての活動を束ねていると感じる。

 昨年末のワイン会のメニューには、大阪の伝統野菜「河内レンコン」やクワイなど直売所や農家から直接仕入れた野菜を取り入れた。達也さんは「農協との仕事、農家との出会いで野菜の香りをあらためて認識した。スーパーのおおかたの野菜は“死んでいる”と思った」と話す。
 農家と出会った二人が、これからどんなレシピを開発し、農家と消費者の間にどんな架け橋をつくっていくのか楽しみだ。
(文・加納壱子)
 
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