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食の仕事人 100番勝負 vol.7

古代の発火法で「手作りの火」を作り続けて30年、岩城正夫さん
加熱調理ができるのは恐らく人間だけである。食の営みにおいて欠かすことのできない「火」や「水」。時には、その起源に想いを馳せてみるのもよいだろう。古代発火法で手作りの火を作り続ける名人の仕事ぶりと、その体験からつかんだ知識と実践のギャップ克服法に注目!


 岩城正夫さんは、原始時代の手法を使った「火おこし名人」である。「火おこし名人」がなぜ「食の仕事人」なのか? いぶかしく思う人も少なくないだろう。
 火のルーツともいうべき「原始時代の火」はどのように作られていたのか、この古代発火法のなぞに岩城さんが取り組んだ。もう30数年も前のことである。以来、今日まで手作りの火や狩猟に使われた矢じりなどのレプリカを作り続けてきた。
 古代発火法には、キリモミ式(木の板の上に木の棒を立て、それを両手のひらできりもみする)、ヒモギリ式(棒を紐を使って回転させる)、ユミギリ式(棒を弓状の小道具を使って回転させる)があったという。少し遅れてマイギリ式、そのほか、ヒミゾ式やノコギリ式などもあるという。
 岩城さんの研究手法は、全国的な遺物調査と復元実験に重きを置いた。実際に目で確かめ、道具を復元し、実際に火を起こしてみた。考えただけではわからなかったことが次々と解明されていった。その結果、神社や博物館、教科書などで定説となっていた火おこしに関する記述の誤りもわかり、書き改められるきっかけになったこともあった。「やってみなければわからない」が岩城さんの信条であった。
キリモミ式発火法で「手作りの火」を作る岩城さん
セルフメイドの世界
A5判並製・328ページ/定価1300円(税込)・発送料400円/群羊社発売


その岩城さんが「セルフメイドの世界 私の歩んできた道」を上梓した。
 この本は単なる古代発火法の解説本ではない。「手作りの火」を始めたきっかけ、手作りの火や矢じりを作り続けた30年もの体験、繰り返し味わった多くの失敗と成功、その体験の中から得た知識と実践との間におこるギャップとその解消法などを、火や矢じり作りの実例をあげながら、独自の「セルフメイドのすすめ」として紹介している。いま話題のスローフードとも通じると岩城さんは自負する。
 「数かぎりない失敗体験から生まれた考え方。あなたも10回や20回の失敗くらいではめげなくなるかも…」 岩城さん自作のキャッチフレーズである。 人は生きるために食べ続けているが、食べるという営みは、ただ食べものを口に運ぶばかりではない。生産、流通、保存、加工、調理など、さまざまな要素があり、その多くは起源を古代にまでさかのぼる。また食材や調理法についても国内外のさまざまの国・地域とつながっており、多様な食の文化が形成されている。食の世界は広くて深い。
 火は、水と同様、食の営みにおいて欠かすことのできないしろものなのだ。

 あらゆる生物の中で「加熱調理」して食べるのは恐らく人間だけであろう。また、必要な栄養素やエネルギーを、さまざまな食品を組み合わせることによって充足する智恵も人間ならではであろう。「火」の恩恵あればこそ、加熱調理によって食卓は豊かになり、併せて食中毒菌や腐敗菌から生命を守ることができ、保存や加工技術を高めることができた。
 「火おこし名人」が、「食の仕事人」であるゆえんである。

蛇口をひねれば飲料水が出て、スイッチを回せば火がつくのが当たり前の生活に慣れすぎて、生きる智恵を衰退させてしまった私たち。古代の発火法などセルフメイドの世界を見ることで、ライフスタイルを見直すきっかけになるかも知れない。
                              (文責 藤原)
「セルフメイドの世界−私の歩んできた道」岩城正夫著
○目次から
(1)手作りの火・30年の体験から (2)手作りの火・他人にもすすめたい (3)どうして「手作りの火」を始めたのか
(4)セルフ・メイドの拡張 (5)私のセルフ・メイドの源流(6) 手作り体験から見た「道具」「機械」
(7)私の「道具」「機械」「技術」論
付録論文
「古文献に見られる古代発火技術について」(共著)「原始時代の技術の歴史は文献なしで何にたよるか」「人は物作りでどんなことを獲得するか」「古代技術復原実験再論」「古代“弩(ど)”復元の試み」
○岩城正夫さんのプロフィール

1930年東京都生まれ。大学卒業後、中学教師、雑誌編集者、学会事務局員、高校教師などを経て大学教師に。2001年和光大学名誉教授。古代発火法検定協会理事長。
〈主な著作〉
「ある発明のはなし」「やってみなければわからない」「原始時代の発明発見物語」 以上、国土社
「原始技術史入門」「原始時代の火」「原始技術論」 以上、新生出版
「原始人の技術にいどむ」「火をつくる」 以上、大月書店
「古代日本の発火技術−その自然科学的研究」「人間どう視るかシリーズ」(全3巻、共著) 「人間・ヒトにとって教育とはなにか」(共著)「暮らしに内なる自然を 生活人間学の試み」(共著) 以上、群羊社
岩城正夫さん
 
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