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食の仕事人 100番勝負 vol.3

食と農のかけ橋めざし、情報発信加納壱子(かのういつこ)さん
日本農業新聞編集局で活躍する中堅記者である。仲間うちでは、通称「いっちゃん」で親しまれてきた。早稲田大学第一文学部社会学専修を卒業後、女子栄養大学大学院で食生態学を学んだ。新聞記者となってからは、農水省記者クラブや地方支局に身を置きながら、食と農のニュースを追い、ペンを走らせ全国へ発信した。
 
が、この7月末、新聞社を休職して突然ニューヨークへ旅立った。グローバルな視野から食と農の問題を考えたい──海外留学は長年の夢であった。ニューヨークではコロンビア大学でニュートリションエデュケイション(栄養教育)を学ぶとともに、食育の最新動向や、その後のファイブ・ア・デイ運動などをつぶさにリサーチしたいという。同大学で彼女が学ぶコンテント教授は、長年の研究の成果として、いくつもの食育プログラムを開発し、その効果の検証を進めている。
コロンビア大学前のマーケット前の加納壱子さん

 仕事も家庭もありながら休職し別居し、海外留学を実行する潔さは、彼女の穏和な表情や静かな語り口からは想像できない。渡米直前の5月には、心労による胃炎で、初めての入院を経験したという。会社と、夫君をはじめとるする家族の理解とサポートが、彼女を後押しする。夫君の料理の腕前は彼女を上回り、毎日きちんと自炊しているそうだ。

 食卓から生産地が、生産地から食卓が、すっかり見えなくなり、その弊害があちこちで問題となり、反省の機運も出始めた。加納さんは考える。「私も含め、次世代の子供の食卓を担う若い消費者に、もっと生産の現場に関心を持ってほしい。そして、食事のあり方を真剣に考えてほしい」。安全でおいしくて安定的な食料の生産も、栄養・調理・食事などによる健康やQOLの向上も、双方が関心を寄せあってこそ可能になる。そのためには食と農のかけ橋が必要だと。
米国・ニューヨークのコロンビア大学前のマーケットで。近郊のニュージャージー州などの農家が、色とりどりの花のほか、果実、野菜、パンやジャムなどを並べる。
加納さんのよき理解者の一人、女子栄養大学大学院教授で食生態学実践フォーラム理事長でもある足立己幸さんは長年にわたり食教育(食育)を推進してきた。「環境、農業、流通、調理、食事、健康、生きる力、材料の保存や再利用といった地域における食のつながりに気付くと、食が面白くなる。食の循環を丸ごととらえる力を育てることが、食育の大事なポイントです」(「日本農業新聞」2004年8月19日付より)。ただ農業体験をすれば食育、食事作りのお手伝いをすれば食育というわけではなさそうである。「農業体験などをきっかけに食の営み全体を理解する力を育むことが大切」と「ニッポン食育フェア」の講演で足立さん。
  加納さんは食生活ジャーナリストの会と農政ジャーナリストの会に属している。どちらかに軸足をおきすぎると、また全体が見えなくなってしまう。
 以前取材をした、地域医療に活躍する医師の名詞に「地球を想い、地域に実践す」と英語で書いてあり、感動したことがあった。食育の問題解決にとっても同じであろう。
 グローバルな視野で食と農をとらえ、暮らしの目線で情報発信をめざす加納記者にエールを送りたい。
 (2004.9 藤原) 
★ニューヨークの加納さんのウエブログ http://ny-yasailife.cocolog-nifty.com
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